集刊 TOMのコラム


映画『ふるさと』

 映画『ふるさと』は、ダム建設によって湖底に沈んでしまう奥美濃の徳山村を舞台にした作品です。あまご釣り名人の老人役、加藤嘉さんもよかったですが、息子役の長門裕之さんも熱演でありました。

 あまごの脈釣りのシーンでは、静かに流れゆく目印を、一緒になって息を飲んで見つめてしまいます。監督の神山征二郎さんは若い頃、熱心に竿を振ったそうで、釣りの場面の描写が素晴らしいのも、うなずけることであります。

 この映画を最初に見たのは、私が釣りに手をつけるまえのことであり、そのときはダム建設や痴呆老人という社会問題を浮き彫りにしたもの、という印象を持ちました。しかし竿を握る身になった今、あらためて見直すと、あまご釣りをテーマにしたものと感じられるようになりました。釣り人の依怙贔屓でありましょうか。


「文芸映画・ふるさと」の碑
今ではただ、この碑と、小学校の建物が残るのみです。村社の白山神社も、移転しました。
徳山ダムの本体工事現場
ロックフィル式ダムで、貯水量は日本最大級です。
新しく作られてトンネルには、徳山の「徳」の字を使った、和漢の古典のレリーフが埋め込まれていますが、ちょっと安易であります。徳山の歴史・文化・地理にちなむ言葉を、刻むべきです。
支流の西谷
今はまだ、工事していませんが、ここも、湖底に沈んでしまいます。大淵では、あまごが次々と、ライズを繰り返しておりました。

(2003/10/15)


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