集刊 TOMのコラム自転車に惚れる


ランドナー

 日頃の運動不足を解消するため、ランドナーという種類の自転車を買った。今はやりのマウンテンバイクとは異なり、ドロップハンドルで、車輪に泥よけのついた、旅仕様の自転車である。

 私が幼い頃、スポーツ車といえばこれのことで、サイドバックをつけてツーリングをしたり、また颯爽と街を駆け抜けたりしているその勇姿に、ひどく憧れたものである。今は不人気車で、まったく見かけなくなってしまったが、私にとって自転車といったら、このランドナーしかないのである。

 少年期の記憶というのは、日頃ほとんど思い出すこともないけれど、澱となって心の奥底に沈んでいるのであろう。私は最近、幼い頃の自分を尋ねて生きていると思うことがある。しかしそれは、ちょっとしたノスタルジーではないようだ。未来はすべて、過去のなかにあるような気がするからである。
(2001/3/3)


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