集刊 TOMのコラム|渓流に遊ぶ |
渓に集う その2
猪鍋大会
流離さん
ポン太さん
小雨の根尾川
新緑の渓に、ネットを介して知り合った7人の釣り人が集まった。今回は、鉄砲打ちでもあるoozekiさんが、鹿刺しと猪鍋を振る舞ってくれるとのこと、楽しみである。
私が到着すると、すでに小さい支流の差し込む広場に、雰囲気のよいキャンプサイトができあがっていた。そして、これもまたほどよい大きさの焚き火が、ちらちらと燃えている。山の中で焚き火の炎を見ると、心の緊張がとけるような、落ち着いた気分になるものである。
早速、昼飯の準備にかかる。oozekiさんは、さっさっと鹿の腿肉をスライスし、また猪肉と野菜を切りわけて、鍋に仕立てている。舞茸岩魚さんは、愛用のフクロナガサを振るって薪を作り、火を保っている。かとチャンは、不意にどこかに消えてしまったと思ったら、タラノメ・コシアブラ・ウド・山葵の葉を摘んできて、からっとした天ぷらを揚げてしまう。みなさん本当に手際がよくて、感心することしきりである。
午後には、少しばかり竿を振ることにした。流離さんは堰堤下の淵でルアーを投げている。あっという間に、アマゴがヒット。また投げると、次がすかさずヒットした。下流を見ると、ポン太さんが流れ出しに丹念に毛鉤を流している。みなさん、さっきまでニコニコと談笑していた様子とはうってかわって、釣り竿を構えた後ろ姿は凛々しく、釣りに対する真剣さが、そこはかとなく伝わってくる。
釣りというものは、何だか人生に似ているような気がする。ともに楽しく語らい会っていても、釣るときは結局のところ、ひとりなのである。そして大物を釣っても、ボウズであっても、ひとりでその思いを噛みしめるところに、釣りの面白みがあるように思う。流れに立つ釣り人の後ろ姿は、それがそのまま人生を歩んでいく姿のような気がして、私はその背中を見つめずにはいられないのである。(2003/5/12)