集刊 TOMのコラムオートバイに昂ぶる


2バルブ200cc

 最初、2バルブ200ccエンジンのオートバイに乗っていた。馬力こそないものの、低回転から力があって、粘り強く走ってくれた。新緑の奥三河の山並み、風薫る飛騨の中山七里、そして雨に煙る木曽路の村々。すべてが楽しい想い出となり、歳を経てもけっして消えることはない。

 今のオートバイは4バルブ250ccで、エンジンはよく吹け上がり、6速のクロスミッションと相俟って、峠道でもぐんぐん登るようになった。けれど最初のオートバイのように、私を揺さぶることはなかった。やはり初めての体験というものは、より強い印象を心身に刻みつけるのであろう。

 それで次に乗り換えるときは、200cc程度のものにしようかと思案してみるのだが、それでも以前と同じ心持ちは戻ってこないような気がするのである。感動というものはいつもその刹那だけのものであって、以前と等しい状況になったとしても、再び同じ感動はよみがえってはこないものだ。楽しい想い出にちょっとだけせつなさが混じっているのは、多分、このためではなかろうか。
(2001/1/29)


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