集刊 TOMのコラム渓流に遊ぶ


渓の亡霊


遠くの峰に陽は落ちて
紫の空に飛んだ毛鉤は
翳り深まる水面を打つ

穏やかな瀬に魚は踊らず
毛鉤は静かに流れ下り
暗闇に吸い込まれるだけ

たとえ釣れなくても構わない
ただどこへも行き場がなくて
毛鉤を打ち続ける私は渓の亡霊
(2002/8/3)


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