集刊 TOMのコラム能管を吹く


古管を吹く

頭金は亀甲紋
 能管は、百年ほど吹き込まないと、本当の音は出ないといわれている。時代がつくと、粗さのとれた、伸びやかな音になるそうである。今年の秋、縁あって、古管を手に入れることができた。目利きの方に見ていただいたら、結構古いものとのことであった。

 吹いてみると、低い音と、ヒシギと呼ばれる高音が出なかった。しばらく使われておらず、笛が乾いているためかもしれない。少ない時間であるが、なるべく毎日吹き込むようにしたところ、三ヶ月ほどして、それらの音が出るようになった。他の音も、ざらつきがとれてきたようである。吹くほどに、いにしえの音が甦ってくるのである。

 むかし、この笛を手にした人は、どんな思いを込めて、吹いていたのであろうか。そんなことに思いを馳せるのも、古管を吹く楽しみのひとつである。そしてこの古管も、また笛をこよなく愛する人に、受け継がれてゆくのだろう。それが誰かはわからないけれど、その人のために、今自分が吹いていると思うと、ちょっとうれしくなるのである。
(2001/11/13)


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