集刊 TOMのコラム渓流に遊ぶ


丸竹フライロッド・テンカラ竹竿を作る その1

 自分で作った竿で魚を釣ったら、どんなに素晴らしいだろうと思い、丸竹を使ったフライロッドを自作してみることにしました。作り方については、かなり詳しいホームページもありますし、書籍では『寿晴の実践・和竿作り』(つり人社)が、わかりやすくて参考になりました。

 さて材料の竹ですが、河川敷をサイクリングやツーリングして探し回り、女竹(丸節竹)の群生地を発見しました。そこに刈られて放置された青みの抜けた竹が数本あったので、これを使うことにしました(乾燥して来年以降に使う分も少々もらってきました)。

刈ってきたら、芽と袴を
取り去って、ナイロンたわしで
汚れをとりました。青い竹は
1〜2ヶ月ほど天日干ししてから、
室内保管します。

 ガスコンの上で炙って、軍手をはめた手で竹を矯めます(矯め木があるといいのですが)。炙りすぎて焦がしたり、力を入れすぎて折ったりしましたが、何とかほどほどに真っ直ぐな材料が出来上がりました。節の所を真っ直ぐにするのが難しいです。

 フェルールは金属製。フライ用の高級なものでなく一般用210円です。フェルールをつける前に、その部分の竹の空洞に補強材(百円ショップで買った竹の編み棒)を挿入しておきます。ドリル刃をペンチで手回しして空洞を一定の内径にし、火入れした補強材にエポキシ接着材を塗って差し込みます。

 グリップはホームセンターで見つけた木工材料で、外径20ミリ内径10ミリ長さ25センチ、ちょうどいい寸法です。リールシート部分を削って、内径18ミリの二重リング(革工芸コーナーで150円)をつけます。竹が細ければ、凧糸を巻いて瞬間接着剤で固めて径を合わせ、エポキシ接着剤でグリップを固定します。

 ここでまた全体が真っ直ぐになるように矯めます。ガイドをつけると矯めにくくなるため、ここではきちっと矯めます。うまく矯められず、竹が熱で硬くなってしまった場合は、1週間ほど置いてからまた作業にかかります。

部品は専用の高級品が
あるのですが、なるべく
安く済ませました。

 ガイド類(トップ1・スネーク6・ストリッピング1・フック1で1500円)は絹糸50番で巻きます。その上から糸が見えなくなるまで、漆(今回は新漆を使いました)を塗っては耐水ペーパーで磨くという作業を繰り返します。最後は耐水1000番、砥の粉と椿油、ピカールの順番で磨き上げれば、光り輝きます。そしてロッド全体が好みの濃さになるまで、薄めた透色で何度か塗り上げます。拭き漆にしようと思ったのですが、新漆の類は本漆に較べて伸びが悪かったので、塗りにしました。最後にちょこっと仕上げ矯めをしてできあがりです。

ガイドの角度を微調整できる
くらいの力加減で糸を巻きます。
あとは漆を塗れば締まってきます。

 それで、はやく魚が釣りたくて、いそいそと管理釣り場に直行です。キャスティングでもラインがきれいにターンしてくれます。掛かった魚も普通に寄せてくることができ、ぽきりと折れたりしなくてよかったです。漆塗りのグリップは濡れると滑りやすいので、やはりコルクかへら竿のような糸巻きがいいように思いました。

【丸竹ロッド1号】
3番7尺2本継ぎ ミディアム
(穂先2-6・手元6-8ミリ)
ティップがあちこち曲がってますね。
節に段差があったり、芽の位置がねじれていたりで、
素材がよくないです。と言い訳してみたり(苦笑)

 当初予想していた自作のロッドで魚を釣る感動というのが、それほどなかったのが驚きでした。このロッドを携えて今シーズン自然渓流を釣り歩けば、そうした感動がじわじわと出てくるのかもしれません。しかし感動しなかったいちばんの理由は、このロッドを作っている最中に、あれこれと心の中で想像して100匹程度の鱒族をすでに釣ってしまっていたからだと思います。実際に管理釣り場で釣ったときには、もう釣り飽きていたのです。

 私にとっては、出来上がって使用するときより、製作中にあれこれと思いを巡らせているときが最も楽しい時間なのでありましょう。次は、金属ジョイントでなく、グラスソリッド穂先を使った印籠3本継ぎ、7尺半のロッドを作る予定です。今度は時間が掛かりそうなので、製作中に200匹は釣れそうな気がしますよ。
(2009/2/22)


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