集刊 TOMのコラム渓流に遊ぶ


2本継ぎ

 丸竹フライロッドで魚を寄せていると、ミシミシゴツゴツという無骨な感触が手に伝わってきます。竹は自然の産物ですから、1本の竹でも細いところあり太いところあり、肉厚の薄いところあり厚いところありで、こうした不揃いな特性が独特な感触を生み出しているのでしょう。私はこの無骨で野趣あふれた感触が好きなので、丸竹ロッドで釣りをしています。

 カーボンロッドの軽さと反発力はすばらしいのですが、滑らかで均整がとれすぎていて(正確には微妙なスパインがありますが)、ちょっと面白味がありません。貼り合わせの六角バンブーロッドは、竹の硬い繊維だけをきれいに整形して、滑らかさと力強さを作り出していますが、その分竹の野趣が失われています。あれはバンブーロッドではなく、バンブーファイバーロッドと呼んだ方がいいと、私は密かに思っています。

 私はこの野趣ということに憧れがあるようです。オートバイもスムーズに走る4気筒ロード車より、ドコドコ振動する単気筒オフロード車が好きです。笛にしても、きれいに吹く龍笛や篠笛より、強い息づかいと拍子を特徴とする能管が好きです。ところが私自身はどうかというと、のっぺりした公家顔ですし、性格もワイルドとは言いがたいようです。自分にないものを外に求めて、心の安定を保とうとしているのかもしれません。

 さて丸竹ロッドに話を戻します。竹の無骨な感触を得るためには、継ぎのない1本の延べ竿がいいに決まっているのですが、持ち運びに困ります。2本継ぎだと運びやすくなり、無骨さもあってすばらしいです。3本や4本継ぎにすると、竹のゴツゴツ感が消えて滑らかになってしまいます。

 そうしたことを知らず、最初に作った2本継ぎを運びやすいだろうと3本継ぎに改作したところ、残念ながら無骨さがなくなってしまいました。そのうち良い材料を見つけたら、2本継ぎを作ってみましょうか。

3本継ぎの方が
持ち運びやすいですね
 
(2010/5/20)


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