集刊 TOMのコラムオートバイに昂ぶる


オフロードバイクについて
初夏、三河・矢作川支流にて
 250ccのオフロードバイクに乗り、山中に分け入り、握り飯を喰ったり、昼寝をしたりしている。未舗装の道を進み、自然の豊富な場所に辿り着くことができるのは、オフ車の醍醐味といえる。しかし、そうした移動の手段としての魅力だけではなく、オフ車のもつ構造自体にも、私は惹かれるのである。

 車体は軽くできていて、取り回しが楽である。倒したときもすぐに持ち上げられる。エンジンは空冷の単気筒で、シンプルそのものである。壊れる箇所は少ないし、それに必要最低限というところが、なんとも潔い。またサスペンションストロークが長く、野山を駈ける鹿のような脚をしている。路面に凹凸があっても、しなやかに対応することができる。

 こうしてみると、軽くて、シンプルで、しなやかなものを、私は好むようである。そしてそれは、自分の理想の生き方を表しているともいえる。実際の自分は、気重で、余計なことばかりして、かたくなであったりする。けれどオートバイと向き合っているときには、少しでも理想に近づいているようで、ちょっとばかり、満足しているのだ。
(2000/8/20)


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