集刊 TOMのコラム渓流に遊ぶ


渓に集う その1

 晩夏のある朝、渓に4人の釣り人が集まった。去年からネットを通して知り合った、渓守人(たにもりびと)さん・流離(さすらい)さん・ひろくんとの、初めての顔会わせである。皆さんと握手を交わして自己紹介すると、緊張もほぐれてくる。普段は、ネットだけの会話だけれど、初めて声を耳にしても、まったく違和感がないのが、不思議なものである。

 渓守人さん・ひろくんと私は、テンカラ(和式毛鉤釣り)で、思い思いに毛鉤を飛ばす。軽いレベルラインを、スースーと素直に前に飛ばしているのは、ひろくんだ。毛鉤は自然に流れに乗っていく。渓守人さんも、同じくレベルで、こちらはピシッピシッとめりはりがあって、誘いも小気味よい。私はというと、重いフライラインをゆらゆらと投げている。ラインが重いので、引っ張られて、毛鉤が流れを斜めに横切ったりする。

ルアーを投げる流離さんの勇姿
 毛鉤を自然に操るということでは、レベルラインに分があるように思うのであるが、私は、フライラインの、あのふわりとした投げ味が好きなのである。そのため、ラインの重さに毛鉤が引かれないように、立ち位置や流す場所に気を遣っている。

 さて、流離さんは、ルアーで渓流に挑戦中である。小滝のある大淵で、無心にミノーを投げるところを、一服しながら眺めていると、8寸弱のあまごがヒットした。夏の名残の明るい陽光のもと、魚が岩の上でぴちぴちと跳ねている。

 ネットの縁で、こうして釣りを愛する方々と、渓に集うことができた。ネットの力もさることながら、釣りという趣味を持つ同志が知り合い、竿を振ることは、とても素晴らしいことだ。年齢や境遇を越えて、心から楽しむことができるからである。そこにあるのは、美しい渓魚と清冽な流れ、ただそれだけなのである。
(2002/9/4)


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